かつて日本産OSが世界を席巻しようとした時、アメリカは今のファーウェイ同様これを潰そうとしたが…

アメリカ

トランプ大統領が動きました。以前より、米中の経済戦争、そして次世代通信規格(5G)を巡って、中国のファーウェイ(Huaway・華為)の排除をアメリカから同盟国に対して呼びかけていましたが、とうとう次の一手、さらなる実力行使に出ました。

それがこれ。AndroidのOS、アプリの供給停止!

Androidというのは、言わずと知れた米Google製のスマホOSです。平たく言うと、iPhone以外のスマホのOS(コンピュータを動かす基本ソフト)は、すべてこれが使われています。中国製スマホもタブレットも全てこれが入っていて、Googleの提供するアプリフォーマット、Google Playでアプリをダウンロードしています。

これが停止されるということは、今後生産されるファーウェイ製スマホは、ただの文鎮。突貫で ファーウェイ 製OSでも作ろうとするのかも知れませんが、OSの開発は一朝一夕には行かず、長年の積み重ねや膨大な開発費、開発期間を要します。もしOSを作れたとしても、アプリを作る人が参加するオープンな仕組みがなければ、誰も参入しません。

グーグル、ソフト提供停止 ファーウェイのスマホに | 共同通信
【ニューヨーク共同】トランプ米政権による中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)への禁輸措置を巡り...

やはり今の時代は、プラットフォーマーが最強なんですね。これがあるから、アメリカは強い。悔しいですが、アメリカの持つハード&ソフトパワーには、単独ではどの国も太刀打ち出来ないでしょう。GoogleしかりAmazonしかりFacebookしかりAppleしかり。

なんたって、コンピュータの核となるOSを作っているのはことごとくアメリカです。PCではWindows、スマホではAndroid、iOS(iPhone等)。

日本にもそういう力があればなあ、と。「スマホの部品は日本の高度技術が支えている」と胸を張ってみたって、それは裏を返せば部品の下請けで、かつて日本が得意としていた、高付加価値の最終製品を作るポジションを、中韓に奪われてしまっているってことですからね。

しかし。

トロンの夢 …日本もかつて情報通信技術をアメリカに潰されていた

かつては日本も国産OS、トロンというものを開発していた、というのを覚えている方もいらっしゃるかも知れません。

トロンとは、1980年代に東大の坂村健博士が開発した国産OSで、電気製品への組み込みOSとして開発されました。その後、トロンをベースとしてウィンドウズのようなPC向けのOSとして「Bトロン」も作られ、純国産PCの誕生が期待されたのですが……。

時は日本の産業に勢いがあった80年代後半。「日本産パソコン」が世界を席巻することを恐れたアメリカが、かの 悪名高き包括通商法スーパー301条(不公正貿易慣行国への制裁条項) を振りかざし、Bトロンは世界から叩き潰され、排除されてしまったのです。

これは、まさに現在、アメリカが中国のファーウェイに対してしているのと同じことで、それを知っている立場からすると、単純にアメリカの尻馬に乗って「ざまを見ろ」と嘲笑う気にもなれず。といってもちろん、ファーウェイのような企業の通信技術が世界で採用されることは阻止しなくてはならないのはもちろんですが。

世界に広まっていたトロン

さて、しかしトロンは、実は死に絶えてはいませんでした。トロンは、メモリー消費量も少なく、使いやすい仕組みだったため、自動車や家電製品への組み込みOSとしては、なんと6割のシェアを誇っています。スマホだって、本体を動かしているのはメインOS(Android、iOS)ですが、画像処理やカメラ、振動やディスプレイ表示を制御しているのは、トロンなのです。

あの、小惑星イトカワから2010年に帰還した探査機「はやぶさ」を動かしていたOSも、トロンでした。

では、坂村博士は、ウィンドウズOSを作ったマイクロソフトのビル・ゲイツのように、この30年でさぞかし巨万の富を稼いで億万長者になったのでは…。と思いますよね。

しかし、坂村博士には一銭も入ってきません。

坂村博士は、トロンをオープンな無償提供することにこだわり、世界各国の誰でも使えるように技術を開放していたのです。果ては、昨年8月、米国電気電子学会(IEEE)に、著作権を譲渡すらしてしまったのです。

世界の発展のためにトロンの特許を取らなかった坂村博士

坂村博士が望んだのは、トロンで動く工業製品が次々に開発されることによって 、世界が発展しすることであって、それを使って巨万の富を築くことではなかったのです。

 「『ミスター坂村、あなたはよく頑張った。これからは私たちがトロンを発展させてあげよう』と言われた。どうしようかと思ったけど、譲っちゃうことにしました。もちろん無償ですよ」。調印の2か月後、坂村博士は、譲渡の理由を尋ねた筆者にそう答えた。

トロン―国産OSが世界標準になる : まとめ読み : 読売新聞オンライン

IEEEは、Wi-FiやPOSIXなど、コンピュータの世界の世界標準を司っている組織なので、そこにトロンが標準規格として認定されれば、さらに世界中でトロンの利用が進むことになります。

組み込み用のトロンは構造がシンプルなので、例えば発展途上国の技術者であっても、先進国の大手メーカーの協力を仰がなくても、独自に製品開発に利用できると言われています。

そして坂村博士は今、IoT(どこでもコンピュータにつながる技術)の研究と普及、後進の学生の育成に取り組んでいます。

東大を退職した坂村博士はINIADの学部長に就任し、「IoTと人工知能を活用して起業する学生を育てたい」と意気込んでいる。

自らの富や名声よりも、その技術が普及して世界を便利にすること、後進を育てる道を選んだ坂村博士。彼こそ、あまりに日本的な、世界に称賛されるべき真の技術者です。

(文・櫻木)

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記者プロフィール

櫻木

在野のコラムニスト。1975年生まれ。大東亜戦争の戦地の取材をライフワークとしており、台湾やインドネシアとの親交が深い。

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