交通事故にあった保育園の園長を質問攻め…被害者イジメの報道権力いい加減にしろ!

時事直言

また、幼い命が犠牲になる悲惨な交通事故が起きてしまった。

5月6日午前、滋賀県大津市の県道交差点で、車2台が衝突し、1台が近くで信号待ちをしていた保育園児13人と保育士3人の計16人の列に突っ込んだ。2歳の男女の園児2人が死亡、別の2歳男児が意識不明の重体となっている。車を運転していた女2人は即現行犯逮捕された。

この2人の容疑者には厳罰を望むが、同時に私が許せないと感じたのは、記者会見での記者たちの質問内容と態度である。

最初から憔悴しきった様子の園長に対し、

「亡くなったお子さん2人はどのような子だったか」
「園児たちはどんな様子で出ていったのか。 いつもと変わらない様子だったのか」
「現場は危険な場所だという認識はあったのか」
「被害園児は何組だったのか」
「他の園児たちにどういった声をかけてあげたいか」

といった無遠慮で不躾な質問をぶつけた結果、園長は泣き崩れて言葉にならなくなってしまった。

すると、待ってましたとばかりにフラッシュの嵐。あたかも、不祥事を起こした企業の社長に質問をしているかのような内容、雰囲気だ。園長側は、被害者だろうに。一体誰が、このような記者会見を開くことを決めたのか? 園関係者内で、保護者達に向けての説明会は必要だろうが、マスコミ向けの記者会見が本当に必要だったのか?

この件で責められるべきは、事故を起こした女2人だし、こんな見通しが良くて交通量の多い道路に鉄製のガードレールを敷設しなかった行政の怠慢だろう。

「危険な場所という認識はあったのか?」という質問をした記者に対しては、園長は「常にはしっこを歩くように指導、徹底していた」と答えている。

実は、被害現場のGoogleストリートビューに、たまたま同園の子どもたちを連れている様子が写り込んでいた。

こちらが被害現場

ストリートビューより
別角度から

見ると、出来る限り車道から離れて、すみっコぐらしのように身を寄せ合い、保母さんがみんなを守るようにして立っているではないか。ちゃんと指導が徹底している。こんな見通しの良い交差点で、しかも横断歩道ではなく、歩道で信号待ちをしているところに、事故車が突っ込んでくるなんて誰に予想できるだろうか。

保育園世代の子を持つ親として、このような事件は本当に胸が痛む。近年相次いでいる、危険運転による自動車事故は、国民的関心の高いニュースとも言えるだろう。しかし、だからといって、根掘り葉掘り、被害者の関係者に聞きたい、聞いてほしいとは思わない。

加害者、事故を起こした二人に対してなら、いくらでも聞きたい事はある。「買い物に出かけるときには普段と変わらない様子だったんですか?」「あの交差点が危険だという認識はあったんですか?」「ブレーキはかけなかったんですか?」「なんでよそ見をしていたんですか?」など、いくらでもある。

しかしこの、ショックを受けている園長に、あんな責め立てるような質問をして、それで書かれたのがこんな記事。

亡くなった雅宮ちゃんと優衣ちゃんについて若松ひろみ園長は「とても素直でいつも笑顔を絶やさない子でした。いつも園長先生、といってくれるかわいい子でした‥これ以上何も言えないです。ごめんなさい」と、涙声を詰まらせた。被害に遭ったのは、うさぎ組の13人。まだ救急搬送され治療中の子どもたちについて同園は「一日も早い回復を」と祈った。

京都新聞

「いつも笑顔を絶やさない子たちで‥何も言えない」園児2人死亡の保育園長、声詰まらせ会見(京都新聞) – Yahoo!ニュース

この程度の情報だったら、そんな質問もこんな記事もなくていい。こんなものは「国民の知る権利」に答えているとは言えない。そもそも、都合のいいときだけ国民の「知る権利」を勝手に代理行使せず、「報道しない自由」を行使するのをやめよ。

特にひどかったのは、園長号泣の引き金となった「散歩に出かける前の園児さんたちの様子はどんな様子でしたでしょうか、いつもと変わらない様子でしたでしょうか?」だ。

我々日本人は、社会正義の心を持っていて、こうした事件に関心は高いが、被害者の悲嘆にくれる様子を好んで見たいとは思わない。目下、特にひどい質問をしたマスコミ各社には抗議が多数寄せられていると聞くが、これを機に、報道、取材のあり方を改められんことを願う。

園長以下、園関係者たちの精神的ショックからの立ち直り、また重軽傷を追った園児、保母たちの一日も早い回復と、そして何より、まだ2歳という幼さで亡くなった二人の冥福と遺族の心の安寧を衷心より祈りたい。

(文・櫻木)

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コメント、ネットの反応

  1. 桜木様、更新お疲れ様です。
    カスゴミはアホな記事を上げて火に油を注いでいます。
    https://toyokeizai.net/articles/-/280873
    火消しのはずがさらに炎上。
    論点ずらしで被害者面はどこかの民族と同じですね。

記者プロフィール

櫻木

在野のコラムニスト。1975年生まれ。大東亜戦争の戦地の取材をライフワークとしており、台湾やインドネシアとの親交が深い。

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